広島平和記念資料館
2007年8月21日訪問
広島平和記念資料館の開館時刻は8時半である。9時過ぎに訪問すると、もうすでにいくつもの団体が入り、にぎわっていた。
音声ガイドの機器が300円で借りられる。展示の番号に合わせて操作すれば、展示してある文字情報以上の説明が流れる。
入り口である東館は、原爆の前後のヒロシマの展示である。降ってわいた災難ではなく、戦争へと進んでいった広島の歩みが展示されている。なぜ原爆が開発され、なぜ広島に落とされたのか、そしてその後の核兵器の歩みは、その後の広島の歩みは、と多方面にわたって展示されている。きちんと見れば、悲惨さだけでとらえることはないようになっている。現代の問題、未来の問題として考えられるようになっている。
そして、ビデオやショップのコーナーを抜け、長い渡り廊下を通って被爆の実相を伝える本館へと至る。
ジオラマに模型、写真に映像、遺品の実物の数々、甚大な被害を物語る遺物……。
見るだけでなく、触れる展示もある。科学的な説明も十分にある。
それだけでなく、本館では、音声ガイドからは約半分のポイントで吉永小百合の朗読が流れる。遺品や遺物の来歴を証言から語っている。そこには生きた人間の息づかいが感じられるようである。単なる解説でなく、情感の伝わるガイドになっている。これは展示物への理解と実感を深める上で効果的である。
復興への希望を表す、焦土に咲いたカンナの花の写真を見て展示コーナーを抜けると、平和公園を見下ろす明るい廊下に出る。眼下にはいわゆる慰霊碑や平和の灯火が見下ろせ、その向こうには原爆ドームが見える。廊下の壁面には世界各国のメッセージや証言ビデオのコーナー、来館者が感想を書くコーナーもある。
その先が出口なのだが、直進すれば本館の入り口に戻る。もう一度見ることも可能だし、東館に戻ることも可能だ。もちろん順路を逆行することになるのだが、厳格にそれを禁じるような構造にはなっていない。
見学者へのインパクトは本館の方が強い。かつては、ここだけが資料館の展示だったのだ。しかし、被害の視点だけでなく、もっと広げてヒロシマを広く多角的にとらえ、また未来への視点をも大切にするためには、東館の展示は欠かせない。そうではあるが、東館の展示が一般の来館者を惹きつける力は、さほど強くないであろう。どうしても説明的になり、理念的になるからである。
本館の展示に強く感化された後の方が、東館の展示への理解は深まると思われる。そう考えると、逆行しやすくなっている構造は、当を得たものであるといえそうだ。
なお、東館地下には、特別展の会場や体験談を聞くための小中のホールがあり、資料室(図書室)もあって、平和に関する調べ学習もできるようになっている。
また、両館をつなぐ場所に位置するショップでは、広島の原爆に関する書籍を多数販売している。一般の書店では入手しにくい体験集などもあり、資料館のショップとして充実している。